どの証券会社で始めるかを比べたい人は、先にネット証券3社比較をご覧ください。この記事では会社ごとの比較を繰り返さず、米国株を注文する前に知っておきたい日本株との違いに絞ります。
最初に知ること:損益は「株価×為替」で動く
米国株を円で管理するなら、最初に見るべきものは株価だけではありません。手数料などを除いた円換算の評価額は、次の掛け算で考えられます。
円換算の評価額=ドル建て株価×株数×為替レート
株価がドルで上がっても、買ったときより円高になれば、円へ換算した利益は小さくなります。株価の上昇より為替の変化が大きければ、ドルでは利益が出ていても、円では損失になる場合があります。反対に、ドル建ての株価が下がっても、円安によって円換算の下落幅が小さく見えることもあります。
つまり為替は、投資結果の横に付くおまけではありません。株価と並び、円換算の損益を左右する二つの要素の一つです。日本株の株価だけを見る習慣のまま米国株へ進むと、口座に表示された損益の理由が分からなくなることがあります。
売買の結果を振り返るときは、ドル建ての騰落と、円へ換算した騰落を分けて見ると整理しやすくなります。
日本株との違いは4つ
1.為替:円のまま買うか、先にドルへ替えるか
米国株の取引はドル建てです。ただし、日本の証券会社では、注文時に日本円を使う「円貨決済」と、あらかじめ用意した米ドルを使う「外貨決済」を選べる場合があります。
円貨決済では、注文時の買付代金を証券会社が定める為替レートで円からドルへ換算します。外貨決済では、先に証券会社などで円を米ドルへ替え、口座へ反映された米ドルで注文します。同じ米国株を買う場合でも、どの方法で両替するかによって、適用されるレートや為替の費用の扱いが変わります。
楽天証券の公式案内でも、円貨決済と外貨決済の両方が示され、外貨決済では事前に米ドルを準備すると説明されています。両替方法、費用、適用時刻は証券会社やサービスによって違うため、注文前に利用先の公式ページで確認してください。
2.取引時間:日本の夜に動き、夏時間で1時間ずれる
米国市場の通常の取引時間は、日本では夜から翌朝です。楽天証券の公式案内では、レギュラーマーケットの日本時間は標準時間が23時30分から翌6時、サマータイムが22時30分から翌5時とされています。サマータイムは、取引の開始と終了が標準時間より1時間早くなります。
日本株のように日中の生活時間と重ならない人も多いため、注文を出したまま眠り、寝ている間に売買が成立することがあります。注文を出せる時間と実際に市場で売買される時間は同じとは限りません。また、休場日、半日取引、メンテナンスによって受付状況が変わる場合もあります。
通常の市場時間外に取引できるサービスもありますが、利用できる時間、注文方法、対象は会社ごとに異なります。使う場合は、取引画面の公式ルールをその都度確認しましょう。
3.税金:配当は現地と日本の両方が関係する
外国法人から受け取る配当は、現地で税金が差し引かれたうえで、日本でも課税が生じる場合があります。これが、米国株の配当で出てくる二重課税の論点です。
二重になった税負担を調整する仕組みに「外国税額控除」があります。国税庁は、外国の法令に基づいて課された一定の外国所得税について、所得税額から一定額を差し引く制度を案内しています。利用するには、外国税額控除の明細書や、外国所得税を課されたことを示す書類などを確定申告書等へ添付する必要があります。控除には限度があるため、現地で引かれた分がすべて戻るとは考えず、個別の扱いは国税庁の案内や税務署で確認してください。
ここで注意したいのがNISAです。国税庁は、NISA口座内の上場株式等の配当等に課された外国所得税額を、外国税額控除の対象にならない税額として挙げています。国内での非課税と、外国で差し引かれる税金は別に考える必要があります。
4.株数:米国株は1株単位で注文できる
国内株式は通常100株単位の取引が多い一方、米国株式は1株単位で売買できます。楽天証券の公式ルールでも、取引単位は1株と案内されています。
必要資金は「1株の価格×為替レート」に取引や為替の費用を加えて考えます。1株から買えることは、価格変動が小さいという意味ではありません。株数が少なくても、株価と為替の両方が動く点は同じです。
米国株を始める手順
1.証券総合口座を開く
最初に証券会社の総合口座を用意します。取扱商品、注文機能、為替の方法、手数料体系は会社ごとに違います。比較はネット証券3社比較にまとめています。
2.外国株式取引口座の状態を確認する
総合口座ができても、そのまま米国株を注文できるとは限りません。外国株式取引口座を別に申し込む必要がある会社があります。
たとえばSBI証券は、ウェブから証券口座を申し込んだ場合に外国株式取引口座が自動開設される場合がある一方、未開設なら外国株式取引口座の開設手続きが必要と案内しています。会社や口座の開設方法で状態が異なるため、ログイン後の「口座開設状況」や「取引口座」の画面を確認してください。
課税口座の種類については、ここでは説明を重ねません。申込画面で迷ったときは特定口座の選び方をご覧ください。
3.円を入金し、決済通貨を決める
外貨決済を使うなら、円を米ドルへ替え、米ドルの残高へ反映されたことを確認します。円貨決済を使うなら、日本円の買付可能額を確認します。
ここで見るのは「円とドルのどちらが分かりやすいか」だけではありません。両替方法、為替の費用、適用レートが確定する時点も確認します。売却後の代金を円で受け取るか、ドルのまま次の取引に使うかによっても、両替の回数は変わります。
4.数量、注文方法、期限を入れて注文する
注文画面では、少なくとも次の項目を確認します。
- 数量:1株単位で入力します。
- 指値:買う価格または売る価格を指定する注文です。条件に届かなければ成立しないことがあります。
- 成行:価格を指定せず、市場へ出す注文です。相場の動きや売買の厚みによって、確認時の表示と成立価格がずれることがあります。
- 有効期限:当日だけか、日をまたぐかを確認します。
- 決済通貨:円貨決済か外貨決済かを確認します。
米国市場は日本の夜に動くため、日をまたぐ注文を残すと、寝ている間に成立することがあります。発注後に考え直しても、取消しが市場へ届く前に成立する場合があります。数量、価格、期限、決済通貨を注文確認画面で見直してから発注することが大切です。
NISAで米国株を買うときの注意
証券会社の取扱いによっては、NISAの成長投資枠で米国株を買える場合があります。NISAの非課税対象、投資枠、損益通算できない注意点など、制度全体は新NISAの基本で確認してください。
米国株では、NISA口座内の対象となる売却益や配当等について日本で非課税となる部分があっても、外国で差し引かれる税金まで一律になくなるわけではありません。国税庁の案内では、NISA口座内の配当等に課された外国所得税額は外国税額控除の対象外です。「NISAだから税金を考えなくてよい」とまとめず、国内の制度と現地の課税を分けて確認しましょう。
米国株が向かない人、始める前に決めたいこと
値動きの理由を株価だけで追いたい人
米国株は、為替の分だけ値動きの理由が増えます。企業の株価がほとんど変わらない日でも、為替が動けば円換算の評価額は変わります。株価と為替を分けて記録する手間を負担に感じるなら、取引を急がず、まず表示の見方を確認するほうが合っています。
英語の一次情報を確認するのが難しい人
米国企業の決算資料や適時の発表は、原典が英語で出ます。日本語の要約は理解の助けになりますが、翻訳の省略や時間差があり得ます。重要な判断材料は原典へ戻る姿勢が必要です。
手数料体系を確認せず注文したい人
米国株では、取引手数料に加えて為替のコストが関係します。会社によっては最低手数料などの条件もあります。具体的な金額や適用条件は変更されることがあるため、注文前に利用する証券会社の公式ページで確認してください。
成績を見る通貨を決めていない人
ドルで見た成績と、円で見た成績は食い違うことがあります。生活資金との増減を把握したいなら円換算を主にし、株価そのものの動きを振り返りたいならドル建ても併記すると、為替の影響を分けて見られます。どちらか一方を正解とするのではなく、何を確認する記録なのかを先に決めておきましょう。
注文前の最終確認
米国株を始める前に、次の5点を確認します。
- 外国株式取引口座は利用できる状態か
- 円貨決済と外貨決済のどちらを使うか
- 円換算の損益に為替が影響することを理解しているか
- 夜間の取引時間と注文期限を確認したか
- 配当の現地課税と、NISA内では外国税額控除を使えない論点を確認したか
銘柄を探す前に、この5点を通しておけば、日本株と同じ感覚のまま注文画面で戸惑う場面を減らせます。
公式情報
- 楽天証券「米国株式の取引をはじめるには」
- 楽天証券「米国株式の基本ルール」
- 楽天証券「取引時間/注文受付時間」
- SBI証券「外国株式取引口座の開設方法を教えてください」
- 国税庁「No.1240 居住者に係る外国税額控除」
- 金融庁「NISAを知る」
2026-07-17 時点の公式情報調べ。最新は公式サイトでご確認ください。